歯周病は、歯周病原菌に感染によって起こります。歯周病原菌となる特異な細菌が、歯周病ポケットのなかで異常増殖すると歯肉がはれ、歯槽骨の破壊を起こさせるのです。
また、歯の周りだけでなく全身的な要因・病気も原因となります。たとえば糖尿病の患者さんには、かなりの重度の歯周病患者さんが多いのですが、糖尿病が悪化するという関係が見られます。
歯を失う原因の第1位はむし歯ですが、歯周病もむし歯の次に歯を失う大きな原因になっています。特に40歳あたりからは、歯周病の比率が高くなっています。
35歳〜44歳の人でおよそ85%、45歳〜54歳では90%の人が、歯周病にかかっています。つまり、ほとんどの大人が程度の差はあっても、歯周病にかかっているといっても過言ではありません。(厚生労働省歯科疾患実態調査1999年より)
診査・診断
肉眼で虫歯や歯の形態・色・形、歯ぐきから出血がないかを診るとともに、歯周ポケットの深さを測定して歯肉の程度を調べます。
また、ピンセットを用いて歯の揺れ具合を診断し、歯槽骨の吸収の程度を予測。噛みあわせや不良なかぶせ物がないかのチェックも行います。さまざまな検査をすることで歯周病の早期発見が可能となるのです。
歯周ポケット検査
この図は歯周ポケット検査です。歯ぐきの中をよく調べることで、歯周病の進行状態や回復状態をチェックします。歯と歯ぐきの繊細な部分を調べるため注意深く行いますが症状によっては痛みを感じることがあります。
歯周病には4つのランクがあり、それぞれの症状により治療法も異なります。
1.歯肉炎
歯石やプラークが原因で歯ぐきに炎症を起こし歯ぐきが赤くはれて歯をみがいたり、リンゴなど硬いものを食べたときに歯肉から出血するぐらいで、ほとんど自覚症状はない。
2.軽度歯周炎
炎症が内部まで広がり、歯と歯肉の間に深さ3ミリほどの歯周ポケットができます。
また、歯を支えている骨(歯槽骨)が溶け始めます。歯肉は充血して赤紫色になり、ブヨブヨしてくる。膿が出ることもある。
3.中等度歯周炎
歯周ポケットはさらに深くなり、4〜6ミリにまで達します。
悪化すると歯槽骨が溶けて歯根部が露出し、冷たいものや熱いものがしみたりすることもあります。歯肉から出血や膿の量が増えるため口臭も徐々にひどくなり歯を支えている骨(歯槽骨)の吸収により歯がグラグラしてくる。
4.重度歯周炎
歯根がむき出しになって、歯が長くなったように見えてくる。歯がグラついて、うまく噛めない。ついには、食べ物を噛んだり、ちょっとした力が入るだけで、歯が抜け落ちてします。
歯ぐきの病気「歯肉炎」
歯と歯肉の間の「歯周ポケット」にプラークがたまり、炎症が生じると赤くはれたりブラッシングすると出血したりします。まだあごの骨に異常のないものを歯肉炎と呼びます。
歯肉炎は早い時期の治療と正しいブラッシングで必ず治る病気です。
骨の病気「歯周病(歯槽膿漏)」
歯肉からの出血やウミの出ている状態を放っておくと、知らず知らずのうちに歯根を支えているあごの骨が溶けてきます。これがいわゆる歯周病です。
歯の周りの骨の破壊まで進むと上のイラストの歯周外科手術になることもあります。
「フラップ手術」は、歯肉を切開しプラークを除去するものです。歯ブラシで出血してしまうような「不良肉芽(にくげ)」があった場合も切り取ります。これと同時に行う「骨移植術」は、歯の根の周りの骨が溶けていた穴を、口の中にある別な健康な骨で埋める方法です。
歯周病の4つのランク(上記図の歯周病の進行の番号)によって治療は異なります。
◆◆スケーリング・ルートプレーニング(SRP)◆◆
■スケーリング(歯石除去)は、歯に付着したプラークや歯石、その他の沈着物などを器械的に除き、歯の表面をきれいにします。歯石は6ヶ月に一回取りましょう。
■ルートプレーニングは、骨が失われたところに行います。歯根の粗い表面をなめらかにします。
両方の操作で歯肉の炎症はなくなり、歯周組織がさらに破壊されるのを抑制します。下の図は歯肉縁下のスケーリング・ルートプレーニング(SRP)の図です。
1)キュレットは歯周ポケット内へ挿入し、根面に対してキュレットの表面の角度が0°に近いことに注意します。
2)歯周ポケットの底部をキュレットの刃の遠心切縁で確認します。
3)キュレットはスケーリングのためのカッティング位置に向きを変えます。
4)刃は歯石を除去するために、スケーリングのストロークで根面に沿って動かします。
※SRPは患者さんの負担もあり、一般的に一回の治療で4〜6歯の範囲で行います。
歯周病の修正治療
歯周病の症状が進んでくると、ブラッシングや歯石を除去するだけではもう治すことはできません。手術を伴う外科的治療が必要になってきます。この段階の治療は、修正治療といって、炎症によって変化した歯肉や歯周病組織の形を元の状態に戻すことを目的にしています。
GTR法(Guided Tissue Regeneration) 歯周組織再生法
歯肉を切開してプラークを除去したあとに歯肉の上皮の下に人工膜を入れて膜下の組織の再生を図る、
疾患の進行を抑制するだけでなく、喪失した歯周支持組織を再生させる新し術式で、セメント質の新生を伴った結合組織性の付着を目的とした治療法です。手術で使用した膜は、取り出さなくても自然に人体組織に取り込まれます。
※人それぞれの体質で成功の度合いが違ってきます。
GBR法(Guided Tissue Regeneration) 歯周組織再生誘導法
歯肉を切り開いて人工の膜を入れ、その膜に誘導させて、歯槽骨が失われた部分に新しい骨ができるようにする手術。3ヶ月程度で新しい組織が再生される。個人差はあります。
あなたの普段の生活をチェックして、思い当たる症状がありますか?
ひとつでもあてはまるものがあったなら、歯周病の可能性があります。詳しい検査を受けましょう!
Q ブラッシングしたときに血がでます。歯周病でしょうか?こんな問い合わせが多いのでお答えします。
A その可能性は大です。歯ぐきが炎症を起こしているサインとしては、出血があります。プラークを適切に除去し、歯石などの沈着物を除去することによって、歯ぐきが引き締まってきます。したがって、歯ぐきから血がでているときは、炎症を起こしているサインと考え、出血を怖がらずにきちんと歯ブラシをあてることが必要です。早めに歯科医院で見てもらうことをおすすめします。